
少々前に話題となりましたが、『奨学金の延滞で信用情報がブラックになる』というニュースが流れたのをご存知の方もいらっしゃるかと思います。
そもそも信用情報自体、クレジットカードの利用や、大きいもので言えば住宅ローンといった『モノを購入する』ということに対して登録されるもの。
しかしなぜ奨学金が信用情報に関係するのか、意外と知られていない一面もあります。
今回は奨学金と信用情報をテーマに書いてみたいと思います。
Contents
奨学金の種類
奨学金といっても色々な運営元がある
一言で奨学金と言っても様々な種類があります。国や地方自治体、民間企業が運営するもの、あしなが育英会なども奨学金を運営しています。
今回、信用情報に延滞すると登録されるという奨学金は、『独立行政法人日本学生支援機構(JASSO・ジャッソ)』が運営するものが対象となります。それ以外の奨学金は信用情報へ未加盟のため対象外です。
独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)とは
独立行政法人日本学生支援機構JASSO(ジャッソ)は、それまであった日本育英会、日本国際教育協会、内外学生センター、国際学友会、関西国際学友会の5つの財団法人が合併して2004年に設立された奨学金貸与事業を行う独立行政法人です。
奨学金滞納問題の経緯
この奨学金滞納問題はさかのぼる事2007年、会計監査院の調査で発覚することが発端です。奨学金の返済がされることなく滞納や放置されてしまう事例が多発しました。金額は660億円あまりに上ることが判明しています。
また、貸付を受けた学生と卒業後、半年間接触を取らないことで現住所が把握出来なくなり、督促も出来ない状態で滞納数が悪化した実態が明らかとなります。
現在では債権回収会社(サービサー)への債権移管や法的処置なども行われ、年間で1万件以上裁判所を通した法的処置がなされているデータもあります。
JASSOは銀行協会に加盟
2010年4月から
このような背景もあり2010年の4月から、JASSOは信用情報機関である銀行協会に奨学金延滞者の信用情報登録を行うことになりました。
ここで、普通の信用情報の運用と異なる点は、奨学金は普通に借りて、通常の返済を行っている時点では信用情報に登録されず、3ヶ月以上の延滞を行った時点で初めて登録されるというところが、通常のクレジットカードなどと取り扱いが異なります。
信用情報へ登録される条件
奨学金の種類が『貸与型奨学金』が登録の対象です。成績優秀者などが対象の『給付型奨学金』は返済の必要が無いため対象外となります。
信用情報への登録条件は、返済開始頃半年経過した時点で3ヶ月以上延滞した場合に登録と明記され、登録される内容は長期延滞者を示す異動情報、すなわちブラックが記録されることとなります。
この異動(ブラック)情報は、延滞解消から5年間記録されることなるため、奨学金のような高額な場合は一度でも3ヶ月延滞を犯してしまうと、相当長期に渡って登録されることになるのです。
話をまとめると、奨学金を借りただけでは登録されませんが、延滞した時点でいきなりブラック情報を登録する、ということになります。また、通常に返済を行っていると、クレジットヒストリー(通称クレヒス)にはならない、ということでもあります。
https://www.jasso.go.jp/shogakukin/entai/kojinjoho.html
▲個人信用情報機関への個人情報・個人信用情報の登録・JASSO公式サイト▲
2009年以前に利用した者の取り扱い
銀行協会への信用情報登録を決定した2009年頃から、奨学金利用の際に延滞したら信用情報へ登録する、という同意書が奨学金の申し込み時に必要となりました。
しかし、それ以前となる2009年より前に奨学金を利用している人たちには、当然ですが信用情報利用の同意を得られていないので、延滞をしても信用情報への登録が出来ません。
そこで、現在も返済中の利用者に追加で、同意書記入の『お願い』をする形を取っています。この同意書を返送していれば、延滞時に信用情報へ記載が出来る、ということになります。
登録するのは全国銀行協会のみ
延滞した場合に登録される信用情報機関は全国銀行協会(KSC)のみです。一般のクレジットカード会社で利用されるCICや、消費者金融が利用するJICCへは登録されません。
ただしそれぞれの信用情報機関は、延滞情報や金融事故情報を、他の信用情報機関同士で交流情報(CRIN・クリンといいます)として扱うため、実質CICやJICCと延滞情報を共有することとなります。
銀行協会の信用情報とは
銀行協会の信用情報には何が登録される?
全国銀行協会(KSC)の信用情報に加盟する会社は、銀行と一部のクレジットカード会社が加盟する信用情報機関となっています。よって、銀行で取り扱いの住宅ローンやオートローン、また銀行カードローンなどが登録されることとなります。
銀行協会の信用情報で唯一特筆する点は、国の機関紙であり国立印刷局が発行する『官報』の情報を記録している点です。信用情報に記録される官報情報とは、自己破産や個人再生といった、裁判所の決定で行われる法的な金融事故処理の情報となります。
しかし、似て異なる、裁判所の決定を必要としない任意整理(債務整理)などは私的な整理となるため、国の情報とはならず官報へは記録されません。
ただし、他のクレジットカードや消費者金融を利用している状況で、その利用している会社を任意整理した場合は当然ながら信用情報へ異動(ブラック)が記録されますので、結局は同じこととなります。
余談ですが、官報には他に何が載っているのかといいますと、新しく公布される法令の詳細を始め、行方不明人の失踪死亡宣告などの国が決定した事項がいっぱい載っています。興味のある方はインターネット版が閲覧出来ますので見てみてください。結構興味深いですよ。
▲インターネット版官報・国立印刷局公式サイト▲
銀行協会信用情報開示の方法は
以前は窓口開示が可能でしたが、現在は郵送のみで信用情報開示を受け付けています。
申請用紙を公式サイトからダウンロードし直接入力、またはコンビニのマルチコピー機から印刷し記入、1,000円分の定額小為替証書と本人確認の身分証明書を同封し送る方式です。
https://www.zenginkyo.or.jp/pcic/open/
▲全国銀行協会・本人開示の手続き(公式サイト)▲
まとめ
・奨学金はJASSOのみ信用情報に登録される対象・登録は3ヶ月以上延滞した場合のみ
・借りて通常で返済されていれば何も登録すらされない
・登録先は銀行協会のみだが、他信用情報機関と情報交流されるため実質他も異動=ブラックとなる
・2009年以前に利用して信用情報登録同意書提出をしていない場合は登録されない
・2009年以降の利用は信用情報登録同意書が奨学金を受ける際に必須となっている
以上となります。
お役に立てれば幸いです(՞ةڼ◔)☝
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